「北鎌フランス語講座」の作者による、葉書の文面で読みとくフランスの第一次世界大戦。

大戦中の葉書のやり取り

第一次世界大戦中の葉書のやり取りを描いた絵葉書

 このページでは、前線の兵士と家族とのやり取りを描いた絵葉書(絵や写真の面のみ)を取り上げてみたい。

 葉書の文面とは関係なく、絵葉書の図柄を見るだけでも当時のようすを知ることができる(ただし、「美化」して描かれている場合も多いので、すべて鵜呑みにはできないのだが……)。

戦場で手紙を書いている風景(1)

軍事郵便

〔下側の説明〕
軍事郵便
……から来た。……に向かっている。すべて順調だ。



戦場で手紙を書いている風景(2)

1914年の戦争 - 家族への郵便物

〔下側の説明〕
1914年の戦争 - 家族への郵便物



戦場で手紙を書いている風景(3)

郵便物。塹壕における我らが勇敢な戦士の住居。

〔右側の説明〕
郵便物。塹壕における我らが勇敢な戦士の住居。



戦地から郵便物が届いたときの風景(1)

早く私に手紙を書いて!

〔イラスト上部のイタリック体の文字〕
はやく私に手紙を書いて!
どれほど郵便屋さんが来るのを
心待ちにしているか見てちょうだい!!

〔下部の万年筆での書き込み〕
戦争初期には、本当に本当だった光景。

あなたのお兄さんに、指が痛いと伝えてちょうだい。爪を短く切られすぎちゃったから。あなたとあなたのお兄さんに治してもらいたいわ。友情を込めて(*1)

(*1)これは戦後まもない1919年に女性が女友達に送った絵葉書のイラスト面。この裏側の通信文にもこまごまとした内容が書かれているが、「戦争初期には、本当に本当だった光景」という書き込みには説得力がある。



戦地から郵便物が届いたときの風景(2)

私たちには何のたよりもない

〔葉書の右側の詩〕(*1)

   私たちには何のたよりもない

「お母さん、郵便屋さんだ! 近道をしているわね、
きっとお兄さんの手紙をもってきてくれるのよ。」
「そうね」とママは小さな声で言う。「もう二週間たつわね、
ナンシーから出してくれた葉書を受け取ってから。」

そして意図せず自分が引き起こしている数々の苦悩に
無感覚になったわけではない老いた郵便屋(*2)はというと、
「戦地から……私たちには何のたよりもないの?」という叫びを耳にして
涙ぐんだ目をそむけて立ち去っていく。

悲しむ母親は、不安におびえながら再び椅子に深く腰かける。
なんとか慰めようとする子供は、嘘と知りながらも
口にするのだ、「夕方にはきっと来るわよ」と。

兵士よ、早く妻子に書いてやれ! 勇敢であると同時に、善良でもあれ。
おまえのせいで、家庭では不安が渦巻いている。
絶望する者たちに、少し希望を送ってやれ!

(*1)これは4行+4行+3行+3行のソネット(ソネ)と呼ばれる詩の形式になっており、脚韻も踏まれている。
(*2)戦争中は、若い健康な郵便配達人は、兵士として前線で郵便物を集配する「郵便物担当下士官」になることが多かった。後方で配達業務に当たるのは比較的年齢の高い者が多く、このようにしばしば老人の姿で描かれる。

戦争中の郵便配達人



戦争中の郵便配達人

戦争中の郵便配達人

〔左上〕
愛する人からの知らせ

〔下〕
早く開けてください!前線からの葉書を持ってきました。
ちょっとした言葉:すべてうまくいっている、キスを送る、やっけてやるぞ!(*1)

(*1)当時の葉書に書かれることが多い言葉が列挙されている。「やっけてやるぞ!」Nous les aurons ! という言葉は、戦争中は合言葉のように使われた。



 その他、大戦中の郵便配達人の実際の写真については、「日付不明-パリ近郊の郵便配達人」の葉書を参照。



戦地に郵便物が届いたときの風景(1)

はやく便りをよこしてくれ。

〔イラスト上部のイタリック体の文字〕
はやく便りをよこしてくれ。
郵便が届いたらっぱが鳴ると、
どれほど急いで我々が駆けつけるか見ておくれ。
なお、我らが勇敢な郵便物担当下士官の作業を
大変にしないよう、くれぐれも宛先は
正確に書いてくれよ。



戦地に郵便物が届いたときの風景(2)

戦争中の郵便配達人

〔イラスト下部〕
郵便物担当下士官
    塹壕にて
 一日のうちで最も幸福な瞬間



戦地での郵便配達(1)

戦争中の郵便配達人

〔絵の左上〕
郵便物担当下士官よ、もしその車輪が壊れたら
私は困り果ててしまうよ(*1)

(*1)この絵葉書では、夢うつつの境をさまよう兵士の夢想によって、手紙を配りにくる郵便物担当下士官が幸運の女神になぞらえられている。西洋絵画の伝統では、「運の女神」ないし「チャンスの女神」は、運やチャンスが気まぐれで不安定であることを表現するために車輪の上に乗り、すばやく立ち去ることを示すために足首に翼をつけて描かれることが多い。「もしその車輪が壊れたら」というのは、ここでは「もし自動車や馬車が壊れて、幸せ=郵便物を運びに来れなくなってしまったら」くらいの意味に理解できる。



戦地での郵便配達(2)

戦争中の郵便配達人

〔絵の上〕
兵士の二人の友
 二人を見つけると兵士はほほ笑んでしまう
 どちらも兵士の糧(かて)となるからだ
 片方は兵士の食欲を満たし
 他方は兵士の心と精神を満たす



戦地での郵便業務

戦争中の仮設郵便局

〔絵の右上〕
よい瞬間

〔絵の下〕
前線での為替の支払い

 なお、左側の仮設郵便局には、窓口の上に「郵便」POSTES と書かれている。
 窓口の下には、小さな字で
 「為替の支払い
  火曜 9時~11時
  金曜 15時~17時」
と書かれ、さらにその下に
 「郵便箱」BOITE AUX LETTRES
と書かれている。

 この絵は、家族などから郵便為替の証書を受け取った兵士が、それを現金に換えるためにやって来たところを描いたもの。



郵便自動車

 前線に近いところでは、ドイツ軍の砲撃を受けて鉄道の線路が破壊されたが、それ以外では列車(蒸気機関車)が走っていた。
 走れるところまでは列車で郵便物を運び、そこから先は馬車や自動車、あるいは自転車を使って前線との間を往復した。

アルベール-軍事郵便を前線に運ぶ郵便自動車

〔写真下の説明〕
アルベール(*1)-軍事郵便を前線に運ぶ郵便自動車

(*1)アルベールはフランス北部、ベルギーに近いソンム県の街。



郵便馬車

 自動車は燃料が必要で、メンテナンスにも専門知識が必要だが、馬なら草を食べさせて水を飲ませておけば、とりあえず扱いが容易だったこともあり、第一次世界大戦では人や武器などの荷物を運ぶために、馬も広く使われた。

アルゴンヌにて-郵便馬車

〔写真下の説明〕
1914~1915年の戦争
アルゴンヌ(*1)にて-郵便馬車

(*1)アルゴンヌはベルギーに近いフランス北東部に広がる森林地帯。



前線と銃後の絆

前線から見た銃後

銃後から見た前線

 VISION は「幻視」(幻覚、まぼろし)の意味。












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