「北鎌フランス語講座」の作者による、葉書の文面で読みとくフランスの第一次世界大戦。

軍事郵便の法令・軍令の日本語訳

軍事郵便の法令・軍令の日本語訳

 このページでは、第一次世界大戦中のフランスの軍事郵便に関する法令・軍令を取り上げ、とりあえず日本語訳をつけておきたい。
 なお、「手紙」lettre という言葉は、狭義では葉書に対する「封書」という意味、広義では葉書を含む「信書」(私信を記した郵便物)全般という意味で使われる。

1914年8月3日のデクレ

 「デクレ」décret は現代では「政令」と訳されることが多いが、当時は(第三共和制下では)むしろ「大統領令」に近かった。
 次に掲げる1914年8月3日のデクレは、第一次大戦中の軍事郵便の郵便料金免除の法的根拠となる有名なもので、当時の軍事葉書には小さな活字で「1914年8月3日のデクレ」Décret du 3 août 1914 と記載されていることがある(例:1915年10月9日-治療中の兵士の病状報告書)。
 このデクレの正式名称は「動員された陸軍および海軍の軍人の郵便物への郵便料金免除の認可に関する1914年8月3日のデクレ」。
 内容は簡単なものだが、現代でも使われる「デクレ」特有の形式にのっとって書かれている。

1914年8月3日のデクレ

1914年8月3日のデクレ

(日本語訳)

 動員された陸軍および海軍の軍人の郵便物への郵便料金免除の認可に関する1914年8月3日のデクレ

 フランス共和国大統領は、

 軍事行動中の軍隊に属する陸海軍人に付与される郵便料金免除に関する1871年5月30日の法律に鑑み、
 上掲の法律第3条を修正した1895年4月16日の財政法律の第23条に鑑み、
 通商産業郵便電報大臣および財務大臣の報告に基づき、

    デクレを発する。

 第1条 普通扱い、すなわち重さ20グラム以下の、動員された陸軍および海軍のすべての軍人からの、またはこれらの軍人に宛てられた手紙は、郵便料金免除で郵便局によって配達されることが認められる。
 第2条 前条で指し示された陸海軍人に宛てられた、またはこれらの軍人から送られた、金額50フラン以下の郵便為替は、手数料が免除される。
 第3条 通商産業郵便電報大臣は、本デクレを執行する任を負うものとする。本デクレは、官報で告示され、法令公報に登載される。

 パリにて、1914年8月3日

共和国大統領
R. ポワンカレより

通商産業郵便電報大臣
ガストン・トムソン



1915年7月25日の軍令

 フランス軍総司令官ジョッフルの名のもとでフランス軍に発せられた軍令。

1915年7月25日の軍令

(日本語訳)

フランス共和国

  東方軍総司令部               後方司令部

軍事郵便
軍令

 改めて念を押しておくが、前線地帯の兵士は、手紙の中で自分のいる場所または地域に言及したり、戦闘の地理的な詳細について話してはならない。また、命じられた移動や気づいた部隊の動きに言及すること、指揮を執る将官の名前を出すこと、あるいはいかなる性質のものであれ害をなしうる情報を与えることは禁止される。
 今後、こうした指示の厳格な遵守を確実なものにするため、以下の規則を採用することとする。

 I. 兵士は、葉書と手紙のうち、好みの方法で郵便のやりとりをする。ただし、地名入りの場所または風景を表した絵葉書の使用は禁止される。
 II. 前線の(郵便区に属する)兵士は、切手を貼っていても貼っていなくても、民間の郵便箱に郵便物を投函することは固く禁止される。
 III. これらの兵士が送る手紙は、軍事郵便局の郵便箱に投函する場合であれ、部隊の指揮官によって指定された場所に差し出す場合であれ、郵便物担当下士官またはその補佐官に手渡す場合であれ、封をせずに差し出すものとする。
 IV. これらの手紙は、宿営地または軍事郵便局において、検閲担当将校によって検査される
 V. 封をして差し出された郵便物、または検閲時に禁止された記載を含むと認められた郵便物は、配達にはまわされない。過失を犯した兵士に対しては、必要に応じて懲戒措置が取られる。違反した情報を含む手紙は、訴追をおこなうために司法警察官に渡される。
 VI. 規則を守っていると認められた郵便物は、検閲担当将校によって封をされ、印を捺されたのち、遅滞なく配達にまわされる。
 VII. 差し出す兵士が手紙を書留扱いにすることを希望する場合は、まず当該兵士またはその代理人が軍事郵便局にいる検閲担当将校に手紙を提示する。検閲担当将校はこれを検査し、配達が認められる場合は印を捺す。ついで、手紙は目の前で封をされ、記録のために係員に渡される。
 VIII. 手紙と一緒に郵便為替証書を送ることを希望する兵士は、その封をしていない手紙を、本人または他人を通じて検閲担当将校に提示する。検閲担当将校は、検査後、問題なければ印を捺し、持参者に返却する。持参者はその場で証書を入れ、自分で封をし、ついで再び検閲担当将校に渡し、他の手紙と一緒にされる。
 IX. 以上の規定は、来たる 8月10日に発効する。

総司令部にて、1915年7月25日
総司令官
J. ジョッフル




(追加予定)

















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