大戦中の郵便料金と貨幣価値
大戦中の郵便料金
第一次世界大戦(1914~1918年)当時のフランスの国内宛の葉書の郵便料金は(簡単にいうと)次のとおり。
通常料金 | 5語以内 (*1) | |
1916年12月31日まで | 10 | 5 |
1917年1月1日以降 (*2) | 15 | 10 |
国内宛の葉書の郵便料金(単位:サンチーム (*3) )
(*1) 文面が所定の挨拶の言葉5語以内の場合(または私信を含まない場合)は割安となった。
(*2) 値上がりしたのは、戦争によりインフレが進行し、物価が上昇したことに伴う措置。
(*3) 1サンチームは1フランの100分の1。
なお、兵士が出す葉書と兵士に送る葉書については、基本的には郵便料金は無料となった(「特殊使用」のページも参照)。
当時の貨幣の価値
次の表は、フランス国立統計経済研究所(INSEE)の換算によるもの。
インフレの進行により、1914年と1918年では1フランの価値が約半分になっていることがわかる。
1914年の1フラン | 2014年の3.35ユーロ |
1915年の1フラン | 2014年の2.79ユーロ |
1916年の1フラン | 2014年の2.51ユーロ |
1917年の1フラン | 2014年の2.10ユーロ |
1918年の1フラン | 2014年の1.62ユーロ |
さて、これを日本と比較する場合、表の右側のユーロに2014年当時の為替の換算レートをあてはめて日本円でいくらになるか計算しても、あまり意味がない。貨幣の価値(すなわち購買力)という点では、貨幣以外のものを基準にして比較する必要がある。たとえば、米やパンを買える値段で比較したり、労働者の月給で比較することになるが、しかし何を基準とするのかによって、まったく違う数字が出てくる。そもそも、日本とフランスでは米やパンの位置づけが異なるし、公務員の給与もフランスでは日本ほど高くはない(日本ほど厚遇されていない)はずなので、基準にするにはおそらく無理がある。ワインや酒にしても、税体系の違いをどう処理するかという問題が出てくる。
ということで、厳密な比較はあきらめ、当時のものを読んで漠然と抱かされるイメージをもとに、計算しやすいこともあって、ここではとりあえず
当時の1フラン=現在の1,000円(1サンチーム=10円)
と仮定してみたい。
とすると、1914年当時の葉書の郵便料金(10サンチーム)は100円(5語以内の場合は50円)だったことになり、まず妥当な額のような気がする。
本ホームページで取り上げ済みの中では、以下の葉書に「フラン」が出てくる。
- 1915年5月25日付の「イタリア参戦」の葉書では、裕福な父親が兵士となった息子に5フラン札2枚を同封している。
- 1916年2月28日付の「兵士Aの手紙の17通目-お金の貸し借り、陣地の変更」では、お金に困っている知人に30フラン貸してやったことが記されている。
- 「1916年7月15日-ヴェルダンでの想像を絶する苦しみ」の手紙では、裕福と思われる「地主」である親に対して「30フラン送ってください」と書かれているが、実際には親は20フラン送っている。
- 1917年4月4日付の「トゥールーズの工場」の葉書では、「女性が1日で8フランも稼ぐ」と驚きをもって書かれている。
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