諸岡幸麿『アラス戦線へ』復刻版
『アラス戦線へ』復刻版について
本ホームページの作者が解説を書いた諸岡幸麿『アラス戦線へ』の復刻版(2018年12月28日発売)について、以下でご紹介します。
第一次世界大戦への日本人の直接的な関与としては、おもに
- ドイツ租借地、青島(ちんたお)への攻撃
- 地中海(およびその他の地域)への海軍の派遣
- 大英帝国傘下の自治領カナダに移住していた日本人(いわゆる日系一世)でカナダ軍(イギリス軍)に加わった人々によるフランス北部(西部戦線)での戦い
- 滋野清武男爵をはじめとするフランス軍の航空隊への参加
の4つがありますが、本書はこの3番目に該当する諸岡幸麿による回想録です。
今回の「復刻版」は、
- 昭和10年に刊行された初版本(入手困難な稀覯本)の「翻刻」
(題字等+巻頭写真+自序+本文438ページ)- 「解説」(128ページ)
の2つの部分で構成されます。
「翻刻」部分は、刊行当時のものを忠実にそのまま印刷したものなので、当然ながら旧字・旧仮名ですが、すべての漢字に振り仮名が振られているので、簡単に誰でも読めるはずです。誤字もそのまま再現されていますが、おもな誤字・誤記については「本文注釈」で指摘しました。
「解説」部分の構成(章立て)は以下のとおり。
- 概要
- カナダの移民と日本人義勇兵
- 西部戦線でのイギリス軍とカナダ軍
- ヴィミリッジについて
- 日本人義勇兵の動向
- 戦死した日本人義勇兵のリスト
- 著者諸岡幸麿について
- 創作されたヴィミリッジの戦いの描写
- 負傷後の諸岡について
- カナダ兵の目に映った日本人
- 参考文献
- 付録Ⅰ 諸岡幸麿年譜
- 付録Ⅱ 地図
(カナダの地図、イギリスとフランス北部の地図、アラス戦線の地図)- 本文注釈
解説中では、とくに『アラス戦線へ』の史実に反する部分(つまりフィクションの要素)について詳しく検証しました。
また、工藤美代子『黄色い兵士達』や山川の『カナダ史』の誤りについても指摘しました。
西部戦線で戦死した53名の日本人全員のそれぞれの戦死場所も(大雑把ですが)特定しました。
著者諸岡幸麿の母方の祖父は、明治維新の功労者、副島種臣伯爵で、父方つまり諸岡家も肥前佐賀藩の武士の家系につらなります。こうした家系的な背景についても詳しく記述しました。
本文注釈では、『アラス戦線へ』本文に出てくる個別の日本人兵士の略歴・写真を掲載したり、戦争文学の傑作『肉彈』(櫻井忠温著)や軍歌の影響なども指摘しました。
本書の内容に関連してご質問等がありましたら、こちらまでご連絡いただければお答えいたします。
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